大手製紙会社の再生紙の古紙配合率偽装事件
概要
古紙を再利用して製造された再生紙年賀はがきの古紙配合率が公称と異なるとの内部告発を発端として、製造元の大手製紙会社A社を含む大手5社で古紙の配合割合を偽って再生紙を製造していたことが判明した。
内容
2008年1月、内部告発のメールを切欠として、あるテレビ会社の取材チームが行った調査で、大手製紙会社の1社であるA社が製造した再生紙年賀はがきが、古紙40%混合の契約であったところ、実態は配合率1%ほどという事実が明るみに出た。同月、日本郵政会社は、年賀はがきを含むすべての再生紙はがきに関し、納入した製紙会社に確認した結果、全社が古紙の割合を偽装していたことが判明した。2007年11月以降に発売された2008年用再生紙年賀はがきは約39億枚にのぼるが、写真用インクジェット紙を除き、すべて再生紙を利用しており、全体の98%を占める。いずれも古紙の割合が基準40%のところ、1~20%と下回っており、その理由として各社とも「古紙の配合率を高くすると、品質が低下する。」という回答であった。
また、日本郵政会社によると、再生紙の使用は、年賀はがきは1996年、普通はがきは1992年、暑中見舞いなどのはがきは1993年に、それぞれ始まったが、発行当初からすべて基準を下回っていたという。2004~2005年度だけで、年賀はがきを含めた再生紙はがきの発行枚数は計107億5,780万枚にのぼる。
一方、A社は、2007年10~12月に生産した再生紙製品を調査したところ、年賀はがき以外でも、古紙100%(R100と表示)のコピー用紙が平均59%、古紙80%(R80と表示)のノート用紙が平均35%など、計10品目の製品で古紙の割合を実際の使用率より高く偽装表示していたことを認めた。このうち6品目は官公庁が購入する際に古紙の割合を定めたグリーン購入法の対象品だった。
記者会見したA社の社長は、約10年前から偽装を認識していたことを認め、「ものづくりのメーカーとして品質を優先した結果、環境偽装やエコ偽装などといわれても仕方がない事態を招いた。責任を取らせて頂く覚悟だ」と述べた。
事件の影響
1.市場環境への影響
- 2008年1月、公正取引委員会は、再生紙に関する一連の偽装が景品表示法違反に当たる可能性があるとみて、製紙各社からの聞き取り調査を始めた。業界ぐるみの「環境偽装」の実態解明に向けた動きが本格的に始動する結果となった。
- 複写機メーカー各社は、製紙会社からコピー用紙を仕入れて自社ブランドで販売しているが、すべてのコピー用再生紙の受注・販売をいったん中止した。
文具大手メーカーも、ファイル背見出しなど1部に古紙配合比率を表示して販売してきたため、実態と異なれば、ホームページで顧客に通知する等、随時対応していくとしており、また一方、印刷会社などには、顧客企業から問い合わせが殺到し、業界団体として製紙業界側に改善を求めていく方針を示した。
以上のように製紙会社の顧客企業には混乱が広がるとともに、消費者への影響も広範囲に及ぶ結果となった。
2.製紙業界への影響
- 2008年1月、日本製紙連合会は都内で古紙配合率に関する会員企業の実態調査を行い、その結果を発表した。発表によると、調査は2007年10~12月の生産・出荷について質問しており、「再生紙はがき」で6社、「他社に誤解を与える製品」で13社、「グリーン購入法対象製品」で14社に不正があったとの回答(重複あり)を得るとともに、コピー用紙などを製造する24社中17社が、何らかの偽装を行っていたことが報告され、製紙業界内で古紙配合の偽装が蔓延していたことが裏付けられた。
- 日本製紙連合会は2008年1月、再生紙の古紙配合率の偽装が相次いで発覚したことを受けて早期の信頼回復のため、再生紙の表示見直しや再発防止策などを検討・協議する「古紙配合率問題検討委員会」を設置した。
- 2008年3月、経済産業省の調査で新たに製紙各社がケナフなど非木材原料の配合率を10年以上前から偽装していたことが明らかになった。 「公称配合率では品質が満足できない」などが偽装の理由で、原料の配合率などを取り決めた顧客との仕様契約違反が、同業界内で横断的に実施されていた実態が浮き彫りとされ、信頼をさらに失墜させた。
- 再生紙の偽装問題で日本製紙連合会は、2008年4月、偽装が発覚した加盟各社が「償い」の意味を込め、古紙回収を促すイベントのほか、古紙回収や間伐材の利用を進めるNGOなどへの助成のため10億円を拠出することを公表した。
3.社内への影響
- 2008年4月、A社の社長は責任を取って辞任し、代表権のない会長となった。
古紙配合率を偽った再生紙問題で社長が交代したのは他に1社のみであった。
参考資料
[新聞・雑誌]
朝日新聞、日経新聞、読売新聞、毎日新聞、産経新聞、日経産業新聞[インターネット]
ヤフー
