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老舗料亭の食材の使いまわし・原材料の不正表示等

概要

 老舗料亭からののれん分けで設立されたA社(料亭)は、主に外注委託で製造した菓子・総菜類の期日偽装、原材料の不適正表示、素材牛肉の産地偽装、素材鶏肉種類の偽装や、客が箸を付けずに残した食材の使い回し等の不正行為を長年にわたり行ってきた。

 

内容

 
1991年7月、大阪に本店を置くある老舗料亭からののれん分けにより、5つの料亭営業会社が誕生した。これらは、東京、大阪、京都などで、政財界有力者や外国要人の接待で利用されることが多く、また東京サミットでは午餐会の料理を提供したことで知られていた。
 
そのうちの1社で大阪市と福岡市に拠点を置いて料亭営業を開始したA社は、老舗ブランドを利用して版図を広げ、2004年には高級料亭の料理とは異なる分野の洋風デザートや、「高級料亭の味を家庭でも」のキャッチフレーズでの総菜販売を製造の外部委託を活用して本格的に手掛ける等、事業の拡大を図ってきた。グループ全体会議で「ブランドに馴染まない」という異論はあったものの、「多くの人に来てもらいたい」ということでカレーの販売も始めた。
 
そういう中、2007年9月、福岡市中央保健所に「A社の天神フードパークで黒豆プリン等の消費期限表示ラベルの張り替えをしている」との匿名の電話が寄せられたことを発端に、以下のような不正事項が次々と発覚した。
 
  1. 期限表示の改ざん: 主に外注委託で製造した菓子・総菜類の消費期限、賞味 期限のラベル張替えによる期日偽装
  2. 原材料の不適正表示: 乾麺・茶漬け・栗甘煮等の原材料に関して、砂糖や色素材の表示欠落、重量順になっていない等の不適正表示
  3. 牛肉の原産地不適正表示: 「牛肉みそ漬け」等の原材料として、佐賀県産・鹿児島県産の牛肉を使用したにもかかわらず、「但馬牛こがねみそ漬け」と表示
  4. 地鶏の不適正表示: ブロイラーを使用したにもかかわらず、「地鶏こがねみそ漬」、「地鶏すき焼き」と表示
 
不正発覚以来、A社は事あるごとに福岡市、大阪市、農林水産省から改善指導を受け、改善報告書を提出したが、会社の組織的関与を一貫して否定し続けた。しかし、2007年11月、牛肉原産地の不適正表示が、不正競争防止法違反(虚偽表示)にあたるとして、A社本店ビル・役員自宅等計12カ所に対する大阪府警による家宅捜索が行われるに至り、福岡市・大阪市の全店舗が休業状態となった。
 
その後、2008年1月には大阪地裁に民事再生法適用の申立てを行い、財産保全命令を受ける(負債8億円)結果となったが、新経営陣により大阪の本店を皮切りに、また3月には博多店の営業を再開した。表示偽装で問題となった物販部門から撤退し、料亭2店舗・従業員の大幅減(184→約70人)での再出発となった。
 
 しかし、2008年5月、客が箸を付けずに残した食材等を別の客に提供していたことが新たにわかり、全店において数年前から使い回しが常態化していたことが判明した。これを契機に、売上がさらに激減し、グループ会社からの支援も得られず、A社は廃業に追い込まれた。
 
 

事件の影響

 

 1.食品業界への影響

 外食産業、食品小売業、デパート等は、取引先やテナントの不祥事による影響を防ぐため、次のような食品に対する管理を厳しくするようになった。
  • ファーストフード店(フライド・チキン): 鶏肉産地をレシートに表示し、店頭ポスター等で国産鶏肉使用をアピール
  • 京都市の料亭: 取引先に使用する食材の産地を再確認
  • 神戸市の中国料理店: 民間検査機関に正確な消費期限の検査を委託
  • 堺市のスーパーマーケット: 最近の食肉偽装事件の発生を受け、食肉を遺伝子レベルで判別する機器を約300万円で購入
  • 大阪市のデパート: 取引先に対する品質管理体制に関するアンケート調査、取引先に文書による産地の確認等を請求、品質管理の専門部署を創設、テナント店の従業員を含め適正な品質表示等についての研修を実施
  • 福岡市のデパート: 全テナントの日報(在庫・仕入・販売数等)の実態調査、担当社員の商品の期限表示確認に加え、食品フロア責任者による抜き打ち検査を実施
 

2.グループ会社への影響

  • グループ内の各料亭営業会社は、定期的な会合を持ってはいるが、他社の経営への干渉は避け、経営上の相互の独立が維持されてきた。しかし各社は、対外的には共通の社名を使用し、1つの老舗料亭であるかのようにブランドの維持に努めてきたので、本事件により、グループ全体で料理の予約や歳暮商品等の売り上げが激減するなど、グループ各社の経営に悪影響を与えた。
  • 20081月、A社以外のグループ4社は、老舗ブランドの信用を回復することを目的として、食材や製品の取り扱いの適正性についての監査を行う監査委員会の新設を決定した。同委員会は各社役員や食品・危機管理・法律等の専門家で構成される。
 

3.社内への影響

  • A社は、本事件により当初は、全店(料亭4店舗・物販2店舗)で休業状態となって、経営的に苦境に陥り、2008年1月には民事再生法の適用を申立て、規模を縮小して営業再開にこぎつけたが、同年5月、食べ残し食材等の使い回しが発覚して客が遠のき、廃業するにいたった。
  • 九州産牛を使用しているにもかかわらず、「但馬牛こがねみそ漬け」の表示で販売したことで、当時の役員及びA社は不正競争防止法違反容疑で立件される見通しである。
  • 長期の休業に伴い、184人の全従業員(7割がパート)を対象に希望退職を募り、約70人で営業を再開したが、2008年5月の廃業により全従業員を解雇する結果となった。
 

参考資料

[新聞・雑誌]
東京新聞、中日新聞、中国新聞、西日本新聞、四国新聞、神戸新聞、佐賀新聞、北海道新聞
[インターネット]
AsAhi.com、YOMIURI ONLINE、NIKKEI NET、日経BP、毎日jp、FujisAnkei Business i、MSN産経ニュース、時事ドットコム、DIAMOND online、日経レストラン、日刊サイゾー、J-CASTニュース、WikipediA
 

投稿者 社長のためのリスクマネジメント情報 :2008年5月30日

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