概 要
大手建材メーカーのA社は、すり替え偽装を行って、国土交通省から住宅の軒裏などに使用する耐火材の認定を受け、性能基準を満たしていると偽称して出荷していた。
内 容
2007年10月、大手建材メーカーのA社は、住宅の軒裏などに使う耐火材(2001年以降の製造)の性能試験に臨む際、試験体に水を含ませたり、実際に販売するものより性能の高い材料を使う偽装(すり替え偽装)を行い、国土交通省の認定を受けていたことが発覚した。対象製品は全国の住宅など約10万棟に使われ、うち少なくとも約4万棟分は大臣認定の耐火性能基準を満たしていない。A社は同建材が使われている物件の把握を進め、交換・補修などの対応を始めた。
A社では事件発覚の1年前の2006年10月に社内の製品調査で不正が判明していたが、事実を公表しないまま約1年間偽装した商品の出荷を続けた。しかし、内部告発の動きを受けて2007年10月、国土交通省に報告するとともにA社社長は記者会見をして公表に至った。
A社は一連の不正で、使われる耐火材を建物の構造別に計20件の大臣認定を取得していたが、すでに16件で基準を下回ることが判明し、国土交通省から認定が取り消された。
不正に認定を得て出荷されたのは、住宅の軒裏やビルの間仕切り壁用の建材で、準耐火構造の軒裏用が約10万棟に、また耐火構造の間仕切り壁用が約750物件に使われた。
事件の影響
1.市場環境への影響
- 耐震強度偽装事件を機に建築基準法が改正され、2007年6月に施行されたが、建築確認審査が一段と厳しくなった結果、住宅着工戸数は2007年7月以降、大幅に減少した。2007年9月、前年同月比44%減と激減し、本事件は、住宅不振をさらに助長する一因ともなりうることが懸念された。
2.住宅業界への影響
- A社や建材納入先の住宅メーカー各社には、家を建てたり買ったりした顧客らから抗議と問い合わせの電話が相次いだ。
- 本事件は、住宅メーカーすべてに対する風評被害に発展する可能性を含み、住宅業界が目指す「良質な住宅ストックの形成」という構想への影響が懸念された。
- A社から問題の耐火建材を購入した各住宅メーカーは、無償改修に乗り出すとともに、改修費用の請求や法的手段の検討を始めた。
- 建材の耐火性能を偽装した問題を受け、住宅・建材メーカーは、相次ぎ品質点検の強化に乗り出し、自主的に試験を実施するようになった。
3.社内への影響
- A社の株は、本事件発覚直後の2007年10月31日、大量の売り市場となり、ストップ安となる200円安の871円まで値を下げた。
- 偽装耐火材を使った住宅の改修費用は、4万棟で300億円以上に上り、最終的にはA社の負担となる。年間1,700億円の売上げを計上するA社にとっては大きな痛手となった。
- A社は、2007年11月8日、4人の代表取締役のうち3人が本件偽装問題の責任をとって辞任した。3人は、2006年10月の社内調査で耐火建材の国土交通省認定を不正に取得していたことを把握していたが公表しなかった。
- A社は、2008年3月期連結決算の業績予想を下方修正し、売上高が8月時点の予想より60億円少ない1,680億円になり、税引き後利益が206億円減って115億円の赤字になると発表した。
参考資料
[新聞・雑誌] 朝日新聞、日経新聞、読売新聞、毎日新聞、産経新聞、日経産業新聞等
[インターネット] ヤフー等